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2017年2月8日

慌てちゃいけない…

こんにちは。日本語教師の薄です。
初中級クラスの文法の授業で「~らしい」という項目を勉強していたときに、次のような質問を受けました。

「先生、『うわさでは、その2人は結婚するらしい』と『うわさよると、あの2人は結婚するそうです』はどう違うんですか。」

事前にしっかり準備しておけば、そんなに怖い瞬間ではありませんが、もし、それが自分の思いもよらない質問だったら…。今まで楽しく授業をしていたのに、学生の前に立っていることが、怖くなる瞬間です。

今回は、そんなつらい場面で、日本語教師はどうするのかというお話です。

似た文法や言葉が増えてくる中級の授業では、上のような質問をされる機会が多くなります。本来なら教案作成の時点で、学生にどんな混乱が起こるのかを予測し、その混乱ができるだけ起きないように工夫を凝らしておく必要があります。言葉の意味、文法の形などを確認して例文を考えておくのは、自分の知識の確認作業です。授業の準備というのは、学生にどう教えるのかを考えることです。


(写真提供:ペイレスイメージズ)

しかし、日本語教師になりたてのころはどんなに準備したつもりでも、経験が少ないために予測が足らないことが本当にたくさんあります。授業中にちゃんと答えられずに泣きたくなるようなことは、日本語教師をしている人ならだれしも経験があることじゃないかなと思います。私も経験があります。というか、本当に反省すべきことですが、今だにあります(^^;

じゃ、そんな質問がでたら、どうしたらいいのでしょうか。
私は日本語教師として働き始めたときに指導していただいた先生に次のように教えてもらいました。

『こんな場合の1番の悪手は、その場で考えて答えてしまうこと』

学生に生まれた疑問をいち早く解決させたい、もしくは、学生からの質問に窮した姿を見られたくない、ごまかしたい、だから慌てて不確実な知識で答えてしまう。分からなくはないですね。でも、一番大切なことは「正しい日本語を教えること」です。そのための方法は、今この場でできないことは謝り、きちんと正しい説明を準備して学生の質問に答えるようにすることです。

私はこのやり方を教えてもらってから今までずっと守り続けています。そして、本当にこれは大事なことだと思います。学生が理解できるように説明するには、ちゃんと考える時間が必要です。一度持ち帰って、自分で考え、周りの先輩や仲間に意見を聞き、万全の状態で説明することで、授業中に失われた教師への信頼は少しだけ回復することができます。そして、学生がもった疑問点の解決法を考えるという経験は必ず日本語教師としてのレベルアップにつながります。そして、先輩や仲間とどう教えようか、どう説明したらわかってもらえるのかを話し合う時間はとても楽しいものです。

学生から与えられる刺激でプロとして成長していく。それも日本語教師という職業のおもしろいところですよ。

ちなみに上の質問の答えはというと…

ちょっと考えてみませんか?普段使っている日本語を意識するところから日本語教師としての一歩を踏み出したんだ、と言えるかもしれませんね♪