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2015年1月21日

虫の声?音?

こんにちは。日本語教師の又木です。
先日、あるクラスで「~が聞こえます」の文法の授業をしました。
鳥や子ども、車や波など、絵カードを出しながら「~の声/音が聞こえます」の文法を説明していると、声と音の違いについての質問が。
NILSでは、文法の授業の前に漢字と語彙の授業でその課で出てくる言葉について勉強しており、その時間はあくまで文法の授業だったので「声と音はVoiceとSoundでしたよね」とシンプルに説明したところ、ある学生から「じゃあ、虫はどちらですか?」と質問が。

私 「では、子どもと車と何が違いますか?」
学生A 「子どもは生きていますが、車は生きていません。」
私 「そうですね。では、虫はどうですか?」
みんな 「生きています」
私 「そうですね。生きていますから”声”ですよね」

この説明で、ほとんどの学生がわかってくれたのですが、「違います!」との声が。
まさか理解してもらえないと思っていなかったので、不思議に思いながら違う切り口で説明することに。

私 「じゃあ、セミは生きていますね。セミは何と言いますか」
みんな 「(各々鳴き声の真似をする)」
私 「そうでうね。ミーン ミーンと言いますね。ミーンは、セミが”言います”ね。これは、何ですか」
学生B 「声です」
私 「そうですね。声です。ですから、虫は声ですよ。Aさん、わかりましたか?」
と尋ねたところ、それはわかったが、音は使えないのか?との質問が。
これでも理解してもらえないと思っていなかったので、どうしてそう思うのか尋ねてみると、
学生A 「モスキートは、“ブーン”です。これは声ですか?」

そう言われて、私も他の学生からも、思わず「あ~!」と声が漏れてしまいました。

教師の立場からその言葉や文法を捉えると、どうしても、日本人の文化や習慣、あるいは自分が文法を教えるために勉強して得たことなどの知識に無意識に囚われて、あたかも相手も疑問に思うところは同じだと思って授業を準備してしまいがちですが、授業をしていると、「ここ、絶対に質問が来るな」と予想して、いろいろと準備していったところには質問が来ず、何もひっかかるポイントがないと思っていたところに限って質問が。
育ってきた国や環境などによって、学生はそれぞれ違う背景を持って勉強しているので、「学生の気持ちになって授業を準備しなければならない」という当たり前のことの大切さを改めて実感するとともに、日本語教師としての未熟さを痛感させられた一コマでした。