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2017年7月3日

「入ってもいいですか。」or「失礼します。」

こんにちは。日本語教師の宮﨑です。

「先生、入ってもいいですか。」

新入生が事務所に入るときなどによく言うセリフです。NILSでは教えていないので、日本にくる前に国で習ってきたのだと思います。しかし、事務所に入るときに「入ってもいいですか。」とは言いませんよね。「失礼します。」と言って入るのが普通ではないでしょうか。
「入ってもいいですか。」は文法的な間違いはありません。「~てもいいですか」のときにきちんと”て形”を使っていますし、「入ります」の”て形”も間違えていません。しかし、使用場面があっていないのです。日本語を教えるときは、文法的なことはもちろんそうですが、その文法を使う場面も教えなければならないのです。

文法を説明するときは、大きくわけて2つ教えなければなりません。
1つ目は、”て形”や”ない形”など、何形に接続するのかです。これがわからないと、聞いているほうは学生が何を言いたいのかが伝わりにくくなります。例えば、「~たほうがいいです」を使うときですが、「入るほうがいいです」と辞書形を使った場合と「入ったほうがいいです」と”た形”を使うと意味が違ってきます。聞いているほうは、違和感がありますが、文脈から理解することができます。しかし、それでは会話が止まってしまうこともあり、スムーズなコミュニケーションができません。また、学生はいつまでたってもきれいな日本語が話せるようになりません。

2つ目は、使用場面です。どんなときに使用する文法なのか、誰に対して使用する文法なのか、また、誰に対しては使わない文法なのか、などです。「~てあげます」を例に見てみましょう。「~てあげます」は相手に何かをするときに使う文法ですが、立場が上の人には使わないでしょう。課長や部長に、「その書類、コピーしてあげます」とは言わないはずです。では、どうして言わないのでしょうか。これは、この文法は立場が上の人に使うと押しつけがましくなるからです。この文法を教えるときは、きちんと使う相手も教えなければならないのです。それを教えないと、学生はいろいろな人に使ってしまうようになります。

各文法項目にはそれぞれポイントがあり、それをきちんと教えなければ学生はきちんと使えるようにはなりません。ただ言えるだけでは「使える」とは言えないでしょう。教える側は、まずは自分が教える項目のポイントをしっかりと理解し、学生にきちんと教えるように努めなければなりません。そうすれば、冒頭のような間違いなくなるでしょう。