検定情報ブログ

2019年10月29日

どんな問題がでるの?(その2)

「日本語教育能力検定試験」では実際にどのような内容がどのような形式で出題されるのか、平成30年度に実施された試験問題に沿って紹介していきます。今回も著作権の問題から、実際の出題をここに転載するわけにはいきませんので、平成30年度の問題をモデルに類題を作成して説明します。

今回は試験Ⅰ問題4から先を取り扱います。

試験Ⅰ-問題4

ここでは日本語学習者の誤用をテーマに300字程度の文章が示され、下線を施した5つのキーワードに対してそれぞれ1問ずつの選択問題を提示しています。

類題言語学習の過程で生じる誤用には、①グローバルエラーとローカルエラーがあります。また別の観点から、言語間エラーと②言語内エラーに分類することができます。学習者は誤用を避けるために、③自信の持てない撥音や語彙の使用を避けようとすることがあります。

問1 文章中の下線部①「グローバルエラー」の例として最も適当なものを、次から選んでください。

1 (誤用)これがいいですと思います。 (正用)これがいいと思います。
2 (誤用)山本先生がもらったプリントです。 (正用)山本先生にもらったプリントです。
3 (誤用)昨日、カレーを食べます。 (正用)昨日、カレーを食べました。
4 (誤用)この服を着ったいです。 (正用)この服を着たいです。

※「グローバルエラー」はコミュニケーションに支障が出るような間違い、「ローカルエラー」は支障な理解ができる間違いです。(誤用)と(正用)で意味が異なる間違いの例は2です。
答え:2

問2 文章中の下線部②「言語内エラー」の例を次から選んでください。

1 このお菓子はおいしいじゃないです。
2 日本語を学ぶのことは楽しい。
3 私はまぶたを閉めています。
4 Aさん:この公園は美しいですね。

Bさん:はい、わたしはいつかまたここに来なければなりません。
※「言語間エラー」は第一言語(母語)の影響による間違いです。「学ぶのこと」や「まぶたを閉める」は中国語の影響を受けた間違いです。4の例は英語表現の影響と思われます。1の「おいしいじゃない」は「ナ形容詞」の「静かじゃない/すてきじゃない」との混同による誤用で「言語内エラー」です。
答え:1

問3 文章中の下線部③のようなストラテジーは、次のどれでしょうか。

1 葛藤
2 化石化
3 回避
4 省略
※学習者が自信の持てない撥音や語彙などの使用を避けることを「回避」といいます。答え:3

 

試験Ⅰ-問題5・問題6

この2つの問題では問題4のような説明文はなく、問題5は「テストと評価」について、問題6は「初球の日本語指導」について、それぞれ4つの選択肢から正当を選ばせる問題が5問出題されます。

類題
テストと評価に関する次の問い(問1~3)に答えてください。

問1 「変換法」と呼ばれるテストの形式の例として最も適当なものを次から選んでください。

1

れい: 難しい → 難しくありません
正しい → (           )
→こたえ:( 正しくありません )

れい: あの人のことばづかいは(              )。

① 正しいではありません
② 正しいでした
③ 正しくありません
→こたえ:(  ③  )

れい: あの人の(                          )。

あり / 正しく / ことばづかい / ません
→こたえ:あの人の( ことばづかいは正しくありません )。

4

れい: あの人のことばづかいは正しでありません
→こたえ:(  ただしくありません  )

※1:変換法 2:多肢選択法 3:再配列法 4:訂正法
答え:1

問2 テストの「信頼性」を損なう要因として最も適当なものを選んでください。

1 聴解テストで、選択肢に書かれたことばがわからず正解を選べない。
2 選択肢が少ないために、いいかげんに回答しても多くが正解になる。
3 受験すべきテストの受験料が高額で容易に受験できない。
4 テストの出題範囲が、事前に提示された範囲と異なる。
※1:「妥当性」の課題 2:「信頼性」の課題 3:「有用性」の課題 4:「領域適切性」の課題
答え:2

問3 テストの分析に用いる数値のうち「偏差値」の説明として正しいものを選んでください。

1 全受験者の得点を高い方から並べた際に50%にあたる得点の値
2 全受験者の得点合計を受験者数で割って算出した数値
3 全体の得点がどのように分布しているかを表す数値
4 標準得点を50が真ん中を示す値になるように変換した数値
※1:中央値 2:平均値 3:標準偏差 4:偏差値
答え:4

 

試験Ⅰの問題4から問題6までを紹介しましたが、いかがでしょうか。やはりたくさんの用語を理解しなければならないようです。基礎的な問題ではありますが、講座の授業や参考書の隅々まで学習する必要がありそうです。

次回に続きます。

※紹介した問題は、平成30年度日本語教育能力検定試験の問題を真似て作成したもので、実際に出題された問題とは異なります。