日本語教育能力検定試験に合格するとどうなるの?
日本語教育能力検定試験は、例年10月(年1回)実施されています。今年度の試験日程は2023年10月22日(日)の予定です。
この試験に合格することで、現行の日本語教師の要件(告示校で勤務する際の要件)を満たすことができ、2024年4月から施行される予定の国家資格「登録日本語教員」になるための要件(現行の試験合格者の場合)にもなることが予定されています。(注:登録日本語教員の制度開始後は、新たに「日本語教育能力を測る試験」が導入される見込みで、そちらの合格が必要です。)
今回は、試験概要と、試験Ⅰについて紹介しますので、特にこれから学習を始める方の参考になれば幸いです。
試験の概要は?
令和4年の実施分より、文化庁が日本語教師の養成における教育内容として示した「必須の教育内容50」に準じた出題範囲になりました。
試験は「試験Ⅰ(マーク式)」「試験Ⅱ(聴解・マーク式)」「試験Ⅲ(マーク式・記述式)」の3つの試験から構成されており、試験Ⅲの記述試験は、試験Ⅰ~Ⅲのマーク式の正答率が60%以上のもののみ採点対象とされています。
【出題範囲】
以下の50項目の中から出題されますが、全ての項目が網羅されるとは限りません。
区分 | 項目 |
社会・文化・地域 | (1)世界と日本の社会と文化 |
異文化接触 | (2)日本の在留外国人施策 (3)多文化共生(地域社会における共生) |
日本語教育の歴史と現状 | (4)日本語教育史 (5)言語政策 (6)日本語の試験 (7)世界と日本の日本語教育事情 |
言語と社会 | (8)社会言語学 (9)言語政策と「ことば」 |
言語使用と社会 | (10)コミュニケーションストラテジー (11)待遇・敬意表現 (12)言語・非言語行動 |
異文化コミュニケーションと社会 | (13)多文化・多言語主義 |
言語と心理 | (14)談話理解 (15)言語学習 |
言語習得・発達 | (16)習得過程(第一言語・第二言語) (17)学習ストラテジー |
異文化理解と心理 | (18)異文化受容・適応 (19)日本語の学習・教育の情意的側面 |
言語と教育 | (20)日本語教師の資質・能力 (21)日本語教育プログラムの理解と実践 (22)教室・言語環境の設定 (23)コースデザイン (24)教授法 (25)教材分析・作成・開発 (26)評価法 (27)授業計画 (28)教育実習 (29)中間言語分析 (30)授業分析・自己点検能力 (31)目的・対象別日本語教育法 |
異文化間教育とコミュニケーション教育 | (32)異文化間教育 (33)異文化コミュニケーション (34)コミュニケーション教育 |
言語教育と情報 | (35)日本語教育とICT (36)著作権 |
言語 | (37)一般言語学 (38)対照言語学 |
日本語の構造 | (39)日本語教育のための日本語分析 (40)日本語教育のための音韻・音声体系 (41)日本語教育のための文字と表記 (42)日本語教育のための形態・語彙体系 (43)日本語教育のための文法体系 (44)日本語教育のための意味体系 (45)日本語教育のための語用論的規範 |
コミュニケ―ション能力 | (46)受容・理解能力 (47)言語運用能力 (48)社会文化能力 (49)対人関係能力 (50)異文化調整能力 |
かなり広範囲に渡る出題範囲があるというのが、日本語教育能力検定試験の特徴の一つです。
難易度は?
直近3年間の合格者数 / 受験者数 合格率はこちらです。
令和4年度 2,182人 / 7,054人 30.9%
令和3年度 2,465人 / 8,269人 29.8%
令和2年度 2,613人 / 9,033人 28.9%
令和4年度で初めて30%を超えましたが、例年28%前後と民間試験の中でも合格率は低い試験と言えます。
平均点はおよそ158~163点の間で推移しており、合格ラインは公表されていませんが、240点満点中、165点(得点率およそ70%)が目指すラインと言えそうです。
試験Ⅰってどんな試験?
試験Ⅰは90分、100点満点のマーク式で構成されています。
問題数は100問です。マークする時間を考慮すると、1問当たり30秒ほどで解いていく必要があります。
『原則として、出題範囲の区分ごとの設問により、日本語教育の実践につながる基礎的な知識を測定する』という測定内容が公表されており、出題形式も、上記の出題範囲からテーマごとの出題となっています。例)出題範囲(33)異文化間コミュニケーションのテーマから、カルチャーショックに関する設問(Uカーブ、Wカーブなど)があります。
対策のポイントは?
試験Ⅰは基礎的な知識を問う問題で構成されてはいますが、出題の範囲が広範囲に及びます。そのため、こちらのような学習方法がおすすめです。
1.過去問題を入手し、どのような問題形式、出題テーマなどを分析する
過去問題を見ずに、学習から始める方がおられますが、それは遠回りですし、せっかく学習してもピンとがずれてしまうことにもなりかねません。
まずは、どのような出題が多いのか、過去3年分は過去問題を準備し、分析することから始めましょう。
2.問題3~問題15の学習から始め、問題文自体を活用する。
問題1から始めるのではなく、問題3以降の設問からテーマを拾い、参考書や設問の問題文自体から知識を定着させていく方法がおすすめです。
問題1は単問(つながりがあまりない設問)になっており、最初にこれから学習を進めると体系的に学習するのに時間がかかってしまいます。
問題3以降はあるテーマに沿った出題形式になっているため、そのテーマを丸ごと学習し、問題演習→知識の確認→周辺知識の確認・定着 の流れで進める方が効率がよいと考えます。
また、過去問題と類似の問題も散見されるため、頻出箇所にも気が付き、学習の力点をどこに置けばよいのか把握もしやすくなります。
3.問題1はテーマごとにカードで学習
たとえば、例年最初の問題(1)や(2)は音声の分野の基礎知識(発音記号や調音点・調音法など)から始まります。この分野だけの過去問題の抜粋をカードなどで準備し、空き時間に繰り返す方法がおすすめです。
また、問題1は【他と性質の異なるもの】を探す問題です。そのため、着眼点をどこに置けばよいのか設問ごとに判断する必要があります。(例:【音便】の場合、音便化しないものを探すなど)
その点でもカードで学習することで、解く際の着眼点を養えます。
目安の学習期間は?
個人差が大きいですが、毎日2時間学習時間を確保できるとすると、出題範囲をカバーするには3か月~6か月は必要そうです。
1日の学習時間に制限がある場合は1年ほどかけてじっくり学習を進めるでもいいのですが、こういった出題範囲が予め決まっている試験は、暗記勝負な面もあるため、あまり学習期間を長くし過ぎず、短期間で学習プランを立てる方がうまく行くことが多いように思います。
その意味では、4か月~6か月ほどで計画を立ててみることも一つの手です。
養成講座の420時間コースでも対策は可能?
半分Yes、半分Noです。養成講座の講座内容は上記の必須内容50に準拠した内容になっているため、検定試験の出題範囲と重なっています。ただし、養成講座はあくまで日本語教師を養成すること(教壇に立って実際に授業を行う際のスキル)に重点を置いている面もあり、試験の対策は必ず別に必要となります。
ニューヨークアカデミーの420時間マスターコースでは、検定の直前対策講座も実施しながら、効率よく現行の日本語教師の要件を満たすことができます。
日本語教師として仕事を始めたいと考えている方はぜひ、一度説明会(個人対応)に参加されてみてください。
https://www.ny-academy.com/briefing/
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坪井